TALK

「票にならないことをやっていきたい。」
CAMPFIRE創立者・家入一真と考える社会の変え方

〜#自由に生きちゃダメですか Vol,1 家入一真×かめいし倫子〜

プロフィール

  • 家入一馬(いえいりかずま)

    家入一馬(いえいりかずま)

    1978年生まれ、福岡県出身。株式会社paperboy&co.(現GMOペパボ)を創業し、JASDAQ市場へ上場。退任後、クラウドファンディング「CAMPFIRE」を運営する株式会社CAMPFIRE創業、代表取締役に就任。他にもBASE、partyfactory、XIMERAの創業、駆け込み寺シェアハウス「リバ邸」の世界展開、ベンチャーキャピタルNOW設立など。

「自由に生きちゃダメですか?」というメッセージをテーマに、政治家を目指すかめいし倫子が社会課題に真剣に向き合い、考える対談シリーズがスタートします。第一弾は「現代の駆け込み寺」とも言われるリバ邸をはじめ、孤立した人々の居場所づくりも手掛けてきた実業家であり、CAMPFIRE創立者の家入一真さん。マイノリティーとの共生の形や、潔癖すぎる現在の日本社会について、お互いの活動を紐解きながら話します。

凝り固まった社会制度に変化の波を。共振する2人のファーストコンタクト

亀石

今回はお忙しいところありがとうございます。勇気を出して対談依頼を送ってみてよかったです。家入さんと初めてお会いしたのは私がタトゥーの裁判を担当した時なので、2018年くらいでしたよね。

家入

もうそんなに経ちましたっけ?

亀石

早く感じますよね。あの時、クラウドファンディングで訴訟の費用集めをしてみたいと相談したら、「社会的に意義のあることだから全面的に協力します」とおっしゃってくださって。おかげでお金も集まり、去年2018年の11月に無事、逆転無罪判決を得ることができました。

家入

おめでとうございます。とても有益なことだと感じ、協力させていただきました。

亀石

訴訟のためにクラウドファンディングでお金を集めることは、今では浸透しつつありますが、法律家はリスク回避を優先するからか、当時の日本の法曹界では前例がなくて。でも家入さんに協力していただいたあの案件をきっかけに、今いろんな訴訟でクラウドファンディングを活用する動きが広がってきました。最近では裁判費用を集めることに特化したプラットフォームも立ち上がり、法曹界全体にとって画期的なことだったと感じています。

家入

お話をいただいた時、正直僕は「そういう形もあるんだ」と驚いたんですが、海外の例を探してみたらすでにあったんです。ただ日本の法曹界がこのような取り組みをしてこなかったのもわかる話ではあります。突き詰めて考えるとリスクでもなんでもなかったりしても、パッと見た時にグレーっぽい試みにはやはり乗り出しづらいですよね。

亀石

弁護士は職業柄リスクを回避する傾向があるので、特にそうだと思います。だからこそ、そこにわずかでも変化を与えられたなら、あの時家入さんと一緒に「えいっ」とやってみて良かったなと思います

一過的にならない支援の仕組み設計とは?最も大切なのは持続可能であること

亀石

こうして私たちの仕事に快く協力してくださったことを始め、家入さんが取り組まれていることは、凝り固まっている社会の空気を変えていく試みのように映っています。私は今回の選挙で「自由に生きちゃダメですか?」というメッセージを大切にしています。誰もが心地よく生きられる社会に変えていくために、政治やITにできることはなんなのか、一緒にお話してみたいと思ったんです。

家入

「自由に生きちゃダメですか」は良いメッセージですね。

亀石

ありがとうございます。家入さんの活動のひとつに、居場所としてのリバ邸づくりがありますよね。まず、どういった経緯でリバ邸づくりに取り組まれたのかお聞きしたいです。

家入

僕は中2でいじめにあって引きこもりになってから、10代の間はほぼ自分の部屋から出られない状況だったんです。でもインターネットのおかげで社会と繋がることができた。今世界に自分ひとりしかいないんじゃないかと思ってしまうような夜でも、ツイッターを開くとバカ話をしているような仲間がいたら、「ひとりじゃないんだ」と思えたり。その原体験があるから、リバ邸をはじめとしてリアルでもネットでも居場所づくりにつながるような活動をしてきました。

亀石

そうした活動では行政や政治のサポートを積極的に求めたりせずに、民間でできることをやろうというスタンスなんですか?

家入

そうですね、民間サイドからそういう活動をする方がスピーディーに事を進めることができるんですよね。今目の前にいる、かつての自分のような人たちが、「ここにきてよかった」と思えるような居場所を、ささやかな規模でもいいから作っていきたいという気持ちが強いんです。助成金を取るための手続きに時間をかけるくらいなら、ビジネスとして成立させた方が持続性もあるなと。ただ、今に至るまでずっと民間一筋というわけではなく、5年前に都知事選に出馬した時は、政治や行政サイドからこの問題に取り組みたいという気持ちでした。

亀石

民間サイドで活動していくうちに自然とより大きな視点でも考えてみたいという気持ちが芽生えたんですか?

家入

そうですね、国や行政は本来そうしたセーフティネットづくりを担うべき存在ですから。そうした気持ちの変化もありつつ、今はまた民間サイドに戻ってきているような形です。

先日お声がけいただいてある地区の視察に行ったことが、また別の角度から居場所づくりについて深く考える機会になっています。そのエリアは犯罪の温床として疎外されてきて、実際にそういう歴史があったりします。でも、逆に言うとあそこでしか生きていけないような人たちもたくさんいるんですよね。

亀石

そういった歴史を持っている場所は数多くありますよね。

家入

都市化にはやはりいい面と悪い面があって、ある地域が健全にクリーンになっていくことで、あそこでしか生きることができなかった人々が排除されてしまったりするんです。実際に行ってみて強く感じたことがたくさんあって、ネットとリアル、政治と民間、NPOと株式会社、そういうセクターを超えてつながっていくようなことをやっていきたいという気持ちになっています。

亀石

なるほど。私が住んでいる大阪は、この10年くらいですごく街が綺麗になったんです。ホームレスの方々への支援も広がり、路上で寝ているような人はほとんど見なくなりました。でも、ふと公園なんかを眺めているとき、「今までここで寝泊まりしていたおじさんたちはどこに行ったんだろう」と、気になることがあるんです

家入

もともとそこにいた人たちがいなくなるわけではないですからね。ひとつのアクションがどう波及していくのか、想像していくことも大切だと思います。例えば短絡的に「クラブ=覚せい剤の取引が行われる場所」と決めつけて規制を設けたとしても、そうすることでむしろ犯罪がより表に出づらいアンダーグラウンドに潜っていくことだってあり得て。

亀石

それは本当にそうで、刑事事件の弁護に長年関わってきた人間として、規制をしたからといって犯罪がなくなるわけではないという注意喚起はしたいです。

家入

例えば、これからの犯罪を減らすために更生施設について、もっと考えることも重要だと感じていたりします。ちょうど最近、少年院や刑務所の教育、プログラミングや企業教育を全部ひっくるめてやれないかと発信していたら声をかけていただき先進的な刑務所の視察に行くことになって。

亀石

民間が手がけているところですよね。

家入

そう、ヤフーショップの立ち上げ方やペットトリミングが学べたり、ドローンが飛んでいたりするんですよ。収容数も多くないので初犯でかつ、わりと軽い犯罪を犯した受刑者のみという形だと思うんですが、先進的な事例としてはすごく面白い。罪を償うのは前提として、施設を出た後のキャリアまで考えて教育して再犯のループを断つことが大切ですよね。

亀石

そうですよね。一度そういうレッテルが貼られてしまうとどうしても生きづらくなってしまうので、その部分のサポートは厚くするべきだと感じます。

社会を変化させる土台をつくるー「人々の小さな声を聞くことから始めたい。」

亀石

家入さんは以前、都知事選に出馬されましたが、そうした経験から今の政治や選挙に関して問題だと感じる部分があったりしますか?

家入

よく若者の選挙離れという言葉が使われたりしますよね。でも僕は、どちらかというと政治が若者から離れていったんだと思うんです。権力もお金も持ってない若者の声を聞いても大きな得票につながらないから、政治家は若者ではなく支持基盤になる利権を持った団体にすり寄っていく。そういう状況になると僕らの世代は声を上げること自体諦めてしまいます。「言っても何にもならないじゃん」と。僕は泡沫候補として扱われ続けましたが、若い世代全員が泡沫として扱われているのが日本の現状だということを伝えたかった。

亀石

そういう思いがあったんですね。

家入

だから、当時僕がとった手法は、そうした世代の声を拾い上げるためのものでした。僕自身に「東京都をこうしたいという思いは空っぽです」とした上で、皆さんがこれまで言いたくても言えなかったことを何でもいいから、ツイッターで「#僕らの政策」とハッシュタグをつけてつぶやいてくださいと。そうしたら僕らが責任を持ってそれを全部まとめあげて公約に落とし込み、実現していきますというやり方にしたんです。こういう声を無視し続けた結果が今の政治なのであれば、まずは「聞くこと」から始めたいなという思いがあって。自分たちも声を上げていいんだと思えるようになるとそれが政治への興味にもつながっていくし、そういう土台作りをしたかったんです。

亀石

そういった土台を作っていくという姿勢にはとても共感します。私も弁護士としてひとつの事件を解決することが社会全体にとって意義を持つという視点をいつも大切にしていて。同性婚や選択的夫婦別姓など、被告は一人だったとしてもその事件と向き合っていくことで、今の法制度のおかしさを浮き彫りにさせることができたり、社会を変えていくきっかけを作ることができたりします。

家入

タトゥーの裁判は、まさにそうでしたよね。

亀石

ですが、そういう裁判にもやはり困難もあります。たった一人の被告人が何百万円も裁判のためにお金を払える訳がないので、最終的に私たち弁護士の持ち出しでやる。それでもやる意義があると感じたからなんですが、そうすると今度は弁護士が経済的に困窮するという問題が派生してしまったり。他にも、司法ですごく画期的な判決をもらっても立法とつながっていないために社会に実際のインパクトを与えることができなかったりします。

家入

司法と立法の間に断絶があるということですか?

亀石

そうですね。せっかく司法で頑張っても結局不十分な法改正にとどまるケースも珍しくありません。タトゥーの件も逆転無罪判決をもらい医師法で彫り師を摘発するのはおかしいという判断が出たんですが、立法も行政も動く気配が全くないんです。彫り師やタトゥーというカルチャーを国が正面から認めることに及び腰なのに加えて、タトゥーについて動いても得票につながらないから、議員が関心を持たないというのが理由だと思います。

家入

デメリットはあってもメリットがないですからね。

亀石

そういうところに限界を感じるんです。どんなに司法で頑張っても、やっぱり法律や制度が変わらなければ社会全体は変わらないと痛感して。むしろ私は自分が当選したら票にならないことをガンガンやっていこうと思っています(笑)

家入

逆転の発想のように聞こえて面白いですね(笑)。この社会にはいろんなマイノリティーが存在します。彼らと誠実に向き合いながら政治に参戦する存在は本当に大切です。

亀石

そういう、政治がやらない分野のことを一生懸命すくい上げようとしてくれているのがNPOの方々だったりして、そこに対して資金的な援助など政治からのサポートも必要があると思っています。

家入

今って、票にならない人たちを無視し続けた結果、どこかすごく生きづらいギスギスする社会になってしまったんじゃないかと思っているんです。ベビーカーを電車の中に持ち込むな問題とか、幼稚園を近くに作るな問題とか。自分たちも昔は子供だったわけで、連綿と上の世代から渡されてきたバトンを次の世代にどう渡していくかをちゃんと考えないといけないですよね。

亀石

本当にそうだと思います。こうしてお話しながら共感することもあれば、新しく気づいたこともたくさんありました。さらにこれから頑張っていきたいと思います。本日はお忙しい中、本当にありがとうございました。

生きづらい社会に変化の波を与えるべく、互いの分野で新たな試みに挑戦し続ける2人。”居場所”、”マイノリティー”をキーワードにサステナブルな社会変化の仕組みづくりについて考えました。対談第二弾では、サイボウズ代表取締役社長・青野慶久(あおのよしひさ)さんが登場。青野さん自身も賛同する選択的夫婦別姓からサイボウズが実践している“新しい働き方”まで、かめいし倫子と意見を交わします。